「なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか」

カテゴリ:小説

なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのかスーザン・A・クランシー著、早川書房刊。
ノンフィクション。というより一種の学術書でしょうか。

エイリアンによる誘拐―アブダクションされた(と本人は信じている)人たちへの聞き取り調査から、人はなぜあり得ないことを信じるのか、あるいは、あり得ないことをあったと記憶するのか。また、何らかの理由でなにかを信じるにしても、なぜ「エイリアンに誘拐されて金属を埋め込まれた」だの「精子を搾り取られた」だの「腸に針を刺された」だのといった、「最もありえそうにない話のひとつ」を信じてしまうのか。それらを心理学の見地から探った書です。

著者は科学者なので、事実としてのアブダクションについてはもちろん否定的なのですが(肯定する科学者も出てきますが)、だからといってアブダクション信者―ビリーバーを「非論理的で、愚かな人たち」とはしていません。むしろ「宇宙人による誘拐」の解釈は、人の心の不安を(ビリーバーに対して)説明し、解消する手段として有効なものであろうと結んでいます。

結論を理解はできるのですが、全面的に受け入れるかとなると、ちょっと抵抗があります。盲信が個人のテリトリに納まるのなら、ニセ科学への盲信も(多少疑問はあれど)有効な精神安定法の一つとして肯定も出来るでしょう。しかし、たいていのビリーバーは、自身の個人的経験に基づく事実―いわゆる「体験談」を他人と共有することによって、自身の経験は客観的な事実であると解釈しようとします(このことは本書にも出てきます)。早い話、たいていの盲信は個人のテリトリには収まらず、同じ形質をもった他者に伝播しやすい。そしてそのような盲信のネットワークは、悪徳の狙うところとなり、社会的不利益をもたらす事が少なくない。

ま、難しい話は置いといて。

人がなぜ非科学を信じるのかや、なぜビリーバーは説得されないかについてユーモアを交えて書いてあり、たいへん読みやすい一冊となっています。

最後にこの本を読まない人向けに、重要だと思われる部分を抜き出しておきます。これはオカルト・マニア方面では有名ですが、一般には意外と知られていない事実だと思います。

40年にわたるじゅうぶんな研究の結果、催眠は記憶を回復させるのに好ましい方法ではないことがわかっている。実際に起きた出来事の記憶を取り戻そうとしても、たいていは役に立たないばかりでなく、偽りの記憶 ― 現実の出来事ではなく、人から言われたり、自分で想像したりした出来事の記憶 ― を作り出しやすくなるのだ。
(中略)
さらに悪いことに、取り戻した記憶はきわめて本物らしく見えるので、あなたもセラピストもそれに気がつかない。

第3章「もし起きていないなら、なぜ記憶があるのか?」91ページ目より

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